大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 昭和25年(う)3336号 判決

被告人は本件は進歩的労働組合弾圧の陰謀であると主張するけれども、左様な主張は適法な控訴理由にならない。次に被告人は原判決は本件地区ニユースを新聞にあらずと説示したけれども本件地区ニユースは(一)選挙前から組合の機関紙として組合員に配付されており(二)本件の文書はその号外であり(三)職務ニユースの記事が中心であり(四)その経費が組合費でまかなわれ組合費は組合員から徴收されておるから新聞と認むべきであると主張するので、考察するにわれわれの社会通念によれば新聞とは一般民衆に対して頒布するため反覆して発行する意思の下に報道及び評論を掲載印刷せられ有料にて配布する文書をいうものと解するのであるから、本件地区ニユースは厳密な意味において新聞紙と称することはできないが、表現の自由を尊重するために設けられた公職選挙法第百四十八条第一項の適用に当つては若し所論の通りいわゆる地区ニユースが全逓労組和歌山地区の機関紙で報道又は評論を掲載して多数組合員に一般的に頒布することを目的とし組合費でまかなわれ組合費が組合員より徴收せられ過去において既に反覆して発行されて来たものであり本件印刷物がその号外であるとすれば同条第一項の新聞と解するを相当と考える。そこで押收の本件文書を検するに証第三号第六号及び第七号の一、三はかかる意味において新聞と認めることができるが、証第四号の一乃至五は何等の報道又は評論を掲載したものでなく単に公職の候補者の氏名を記載した選挙運動用のビラに過ぎないこと極めて明瞭である。次ぎに証第三号及び第七号の一の文書を見るに大部分は報道及び評論の記事であるが上段右側に「日本の独立を守り戦争を防ぐために地区執行委員長茂野嵩参議戦に立候補」左側に「中央執行委員長山口寬治全国区で出馬」と記載し三段右側に「二人共当選させよう我々の職場から国会や地方議会え送ることは非常に有利である。全逓労組は戦う委員長山口寬治氏を全国区から出馬さした。労働者の立場からケン身的に斗う茂野、山口の二人を当選させよう」と記載し四段右側に「茂野委員長は左記スローガンをもつて斗う」と記載し五項目のスローガンを掲げている。又証第六号及び第七号の三の文書を見るにこれも大部分はいわゆる報道及び評論の記事であるが裏面上段に。「茂野さんの街頭宣伝隊出動、日本の独立、自由、平和を訴える」と見出しを書き「茂野さんの参議院候補立候補推セン街頭宣伝隊は連日和歌山市内にて今度の選挙は日本の独立と自由と平和を守るか軍事基地になるかの重大な選挙であると訴えた」と記載し、下段左側に「八日ヒヨツコリ地区本部に現われた七〇過ぎの老人は「私は茂野さんをおしたい」と次の如く語つた。「ソ連と中国がとなりにかまえているのに単独講和等してもし戦争になつたら日本はすぐにやられてしまう。単独講和なんかアホウの言うことだ。戦争になつたら吉田はアメリカえでも亡命出来るかしらんが残された国民はどうなるのだ。私は何もわからんが東北の学生らが金持のボツチヤンであり乍ら左翼運動をやつている。金持が金持に反対するところに資本主義の悪いところがあるのだろう。今度はどうしても茂野さんを当選させな日本の重大な危機ですよと語り、あなた方は若いのだから張切つてやりなさいとハツパをかけて帰つた。」という記事が掲載されているのである。右記事を綜合して観察するときは明らかに特定候補者の推薦支持のみを目的としているのであつていわゆる報道又は評論の範囲を逸脱しているものと認められる。従つて本件文書の頒布を公職選挙法第百四十六条第一項に問擬した原審の措置は新聞の解釈について妥当でないかどがあるが結局において正当であると言わねばならない。論旨は理由ない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!